非公開と書かれた不動産資料のイメージ
不動産取引の現場 2026.04.21 公開
#不動産取引の現場 #未公開物件 #利益相反

「未公開物件」の正体|なぜ利回り2%台の物件が回ってくるのか

この記事でわかること

Q. 未公開物件は本当にお得なのですか?
A. 「未公開物件=優良物件」ではありません。電話営業で「未公開」と称して勧誘される物件の大半は、自社分譲・買取再販・三為契約といった業者自身が売主となる取引です。業者の利益が販売価格に上乗せされており、公開市場で相場と比較されないクローズドチャネルだからこそ、その価格で成立しています。
Q. なぜ不動産会社は未公開物件を電話営業で売るのですか?
A. 電話営業で「未公開物件」を売り込む業者は、多くが仲介ではなく業者自身が売主です。仲介業者であれば物件を広く公開して買い手を募る方が合理的ですが、売主業者は販売価格を自分で決められるため、相場との比較を避けられるクローズドな販売手法と相性が良いのです。「未公開」は商品力の裏返しではなく、販売戦略上の選択です。
Q. 利回り2%台でも成立するというシミュレーションは信用できますか?
A. 節税効果やキャピタルゲインを前提にしたシミュレーションには注意が必要です。RC造ワンルームの減価償却は47年で、年間の税還付はわずかです。また、業者利益が上乗せされた価格で購入しているため、売却時に購入価格を上回ること自体が困難なケースが多いです。
Q. 電話営業で紹介される未公開物件は怪しいですか?
A. 「未公開物件をご紹介します」という電話営業の大半は、仲介ではなく業者自身が売主の取引(自社分譲・買取再販・三為契約)です。仲介業者であれば物件を広く公開して買い手を募るほうが合理的なため、電話営業で「未公開」と称してクローズドな勧誘をしてくる時点で、業者売主取引である可能性が高いと考えてください。怪しいというより、「業者の利益が上乗せされた価格で売られている」ことを前提に判断する必要があります。
Q. 未公開物件は利回りや投資価値の面で買って大丈夫ですか?
A. 未公開物件=優良物件ではありません。電話営業で勧誘される未公開物件の多くは、表面利回り3.5〜4.5%が主流の業者売主取引で、一部は2%台にとどまります。業者利益が販売価格に上乗せされているため、購入時点で「相場より高い」状態でスタートしており、出口(売却時)に購入価格を上回ることが困難なケースが多いです。レインズ・マーケット・インフォメーションや国土交通省「土地総合情報システム」で同種物件の成約事例を確認し、相場観を持って判断してください。

「未公開物件をご紹介します」——平日の昼間、会社の電話に知らない番号から一本のコールが入る。名簿の下四桁を変えて無差別に架電している営業マンの定型句だ。

「未公開」という響きには特別感がある。ポータルサイトには載らない、限られた人にしか紹介されない優良物件——そう連想させるように設計された言葉だ。ところが電話の向こうにいるのは、多くの場合、仲介業者ではない。業者自身が売主として保有する商品を売り込んでいる相手だ。

この記事では、電話営業で流通する「未公開物件」の取引形態と、そこに組み込まれた利益構造を分解する。鍵になる視点は一つ—— 電話の相手は仲介業者か、売主業者か 。これを間違えると、提示された価格の意味を根本から誤る。

電話営業の「未公開物件」は仲介ではない

まともな仲介業者なら、わざわざクローズドに電話で売り込む理由がない。物件を業者間流通網や大手ポータルに載せれば、業界内で広く探してもらえるし、買い手の反響も取れる。良い物件ほど、露出を増やした方が高値で売れる。仲介手数料は上限が決まっているから、隠して売っても増えない。むしろ露出を絞るほど買い手候補が減り、売主への説明責任も重くなる。

電話営業で「未公開」と称して回ってくる物件は、構造的に 業者が売主 であることがほとんどだ。つまり買主から見た相手は、仲介ではなく販売業者。この立場の違いは決定的である。仲介・三為・買取再販の記事で書いた通り、お金の流れも、利益の出方も、リスクの配分もまるで違う。

業者が売主になる3つの類型

「未公開物件」として流通する業者売主取引には、大きく3つの類型がある。

自社分譲(新築デベロッパー)。 業者自身が土地を仕入れ、自社で建物を建築し、直接販売する。投資用ワンルーム専業の大手が典型で、売主は業者そのもの。仲介手数料は発生しない代わりに、土地仕入れ価格・建築費・広告費・営業人件費・業者利益が、すべて販売価格に乗る。

買取再販。 業者が個人売主から中古物件を安く買い取り、リフォームや区分けを施して再販する。売主との交渉では査定額を抑えにかかり、買主には市場相場か、それを上回る価格で売る。仕入れ段階と販売段階の両方で利ざやを取るモデルだ。

三為(さんため)契約。 売主→業者→買主の順で売買契約を結び、登記は売主から買主へ直接移転させる形式。業者は中間所有者にならないので登録免許税・不動産取得税を節約できる一方、買主には売主から業者への売却価格が開示されない。業者がいくら上乗せしているか、買主からは見えない構造だ。

3つに共通するのは、 業者が売主である以上、販売価格を自分で決められる ということ。公開市場で相場と比較されないクローズドチャネル(電話営業)は、このビジネスモデルと極めて相性が良い。

類型ごとの仕入れと利益の乗せ方

自社分譲の仕入れノルマ

自社分譲のデベロッパーは、土地を仕入れて建てて売るサイクルを止められない。用地取得競争は熾烈で、他社に競り負ければ翌期の売上が立たない。結果として「高くても買わざるを得ない」仕入れ判断が繰り返される。仕入れコストが上がれば、建築費・営業コストと合わせて販売価格に全て転嫁される。

業界解説(All About「マンションの原価の秘密」等)によれば、新築マンションの総売上を100とした場合、用地費32・建築費48で原価率は概ね80%前後、デベロッパーの純利益は5〜10%程度とされる(筆者がマンションデベロッパーに勤務していた頃の実感とも概ね合致する水準だ)。ワンルームタイプは専有面積あたりの単価が取りやすく、利益率7〜15%程度になりやすいとする見立ても紹介されており(TOCHU「新築ワンルームの価格相場」)、ファミリータイプより高利益率に設計されやすい傾向がある。

かつて大手と呼ばれる投資用マンション業者の中には、受話器を手にガムテープで巻きつけて架電を強制したという逸話まで残っている。仕入れ価格を販売価格で回収するには、電話を止められない商流が必要だった、ということだ。

買取再販の値ざや

買取再販は、個人売主から物件を 相場より安く買い取る ことで最初の利益を作る。売主の売り急ぎや相場感の欠如を利用し、査定額を意図的に低く抑える手口が使われることもある。リフォームと販売マージンを乗せて再販する段階では、通常価格帯の相場に戻すか、それを超える価格で売られる。仕入れと販売の両サイドで利益を取れるのが、このモデルの特徴だ。

三為の中間利益

三為では、売主から業者への売却価格と、業者から買主への販売価格の差額が業者利益になる。買主には仕入れ値が見えないため、利益率の検証が困難だ。特に収益物件では、利回りシミュレーションが業者側の販売価格を起点に組まれるため、購入時点で相場から乖離した価格をつかまされていても気づきにくい。

「未公開」が果たしている役割

ここまで整理すると、「未公開」という言葉の本当の機能が見えてくる。

業者売主の取引では、公開市場にさらされないことが価格設定の自由度を担保する。ポータルに載せれば、即座に相場と比較される。利回りの低さ、築年・立地に対する割高感、同種物件との乖離——すべて可視化されてしまう。

業界各社の利回り解説を見ると、都心新築ワンルームの表面利回りは近年3.5〜4.5%が主流で、一部の新築では2%台も珍しくないとされる(プロパティエージェント調べ、ICHIWA不動産投資メディア等)。管理費・修繕積立金・固定資産税・空室期間・原状回復費を差し引いた実質利回りは、2%前後、物件によっては1%台にまで落ちる。ポータルに出せば既存の投資家は素通りする——そういう物件を、公開市場を経由せずに売る仕組みが「未公開」だ。

電話営業で「未公開です」「選ばれた方にだけご紹介しています」と前置きすることで、二つの効果が同時に生まれる。

相場隠し。 公開市場で値付けされないから、業者の言い値が妥当に見える。買主は比較対象を持たないまま判断を迫られる。

希少性の演出。 「限られた人にだけ回ってくる」と伝えられれば、買主の損失回避心理が刺激される。冷静な利回り計算よりも「逃したくない」という感覚が先行する状況を作り出せる。

つまり「未公開」は商品力の裏返しではない。 業者が売主として価格主導権を握り続けるための装置 だ。

シミュレーションのカラクリ

業者売主の販売では、価格の妥当性を説明する役割をシミュレーション資料が担う。そこには、いくつかの前提がはめ込まれている。

節税効果の過大評価。 RC造の法定耐用年数は47年。中古を含めても、新築ワンルームの減価償却費は年間数十万円規模にしかならない。課税所得を圧縮して戻る税金は、年収帯にもよるが年十数万円前後に収まるケースが多い。所得税率の高い層でなければ効果は限定的だ。「節税で手取りが増えます」と説明されても、実額を計算すれば拍子抜けすることが多い。

雑費の過剰計上。 営業資料には「管理費」「通信費」「交際費」「書籍代」など、実態と乖離した経費が積まれていることがある。税務調査で否認されれば追徴課税の対象になるのは購入者側だ。シミュレーションを作った営業マンは追徴を払ってくれない。

キャピタルゲイン前提の危うさ。 「10年後に売却すれば含み益が出ます」という説明は、購入時点で業者利益が上乗せされた価格を起点にしている。相場が横ばいなら、売却時に購入価格を回収することすら難しい。値上がり相場を前提に組まれたシナリオは、前提が崩れた瞬間に破綻する。

サブリース保証の落とし穴。 家賃保証には必ず期限があり、更新時に保証賃料が下がる条項が入っている。2020年施行の賃貸住宅管理業法は、28条で特定賃貸借契約の誇大広告を禁止し、29条で不当勧誘を禁止、30条で契約締結前の重要事項説明を義務付けた。ただし、契約書を読み切れていない購入者は今も少なくない。

「節税」「生命保険代わり」「年金代わり」は営業トークの三種の神器。 どれも単体では嘘ではないが、実額で見ると語られるほどの効果はない。言葉の響きで判断させて、数字で検証させない——この順番が崩れたら契約は取れない、というのが業者売主モデルの営業現場の経験則だ。

消費者トラブルの件数にも傾向が出ている。国民生活センターは2019年3月の注意喚起で、20歳代の投資用マンション相談が2013年度160件から2018年度405件へと約2.5倍に増加したと公表した。平均契約購入金額は2,000万円超。レストランに呼び出して帰さない、深夜まで拘束する、職場に架電を繰り返す——強引な勧誘の手口は、今も大きくは変わっていない。

本当に未公開で流通する物件

では、「未公開で本当に良い物件」は存在しないのかというと、それは違う。ただ、一般消費者には回ってこないだけだ。

売主都合で公開できないケースはある。離婚・相続・債務整理など、売却の事実を知られたくない事情がある場合、売主は「近所に知られないよう進めてほしい」と要望する。この場合、業者は広告を出せない。チラシもポータルも使えない。自社の顧客リストの中から、この物件に合いそうな相手に一件ずつ打診することになる。

本当に条件の良い物件は、プロの投資家ネットワーク内でクローズドに動く。業者の担当者が、普段から大口取引をしている個人投資家・法人投資家に電話一本で持ち込めば、その日のうちに買付が入る。数十億円規模の物件でも、同じ筋でまとまることは珍しくない。こうしたフローに載った物件は、一般消費者が目にする時には既に決まっている。

順序が重要だ。プロの投資家に持ち込まれた物件のうち見送られたものが、業者の在庫または営業リストに回り、最終的に一般消費者への電話営業に下りてくる——この可能性が高い。電話を受け取った側からは、この順序は見えない。

利益相反の正体

業者売主モデルと仲介モデルの決定的な違いは、利害関係の方向にある。

仲介では、業者の報酬は売買の 成約 で発生する。高すぎる価格では成約しないから、仲介業者は相場観を示して売主・買主双方を納得させる方向に動機づけられる。価格の透明性と合意形成が業務の本質だ。

業者売主では、業者の利益は 販売価格と仕入れ価格の差額 で決まる。買主に高く売るほど利益が増える。買主を納得させる必要はあっても、適正価格を示す動機はない。むしろ、相場を見せずに判断させた方が、業者の取り分は大きくなる。この非対称が、買主にとっての構造的リスクである。

電話で「未公開物件をご紹介します」と言われたら、立ち止まって一つだけ自問してほしい。「相手は仲介業者か、売主業者か」——答えが売主業者だとしたら、提示された価格の妥当性は、自分で公開市場と照合するしかない。公開されている類似物件と比べて、どれくらい乖離しているか。そこに乗っているのは、業者の仕入れコストと利益である。

本当の未公開に近づく方法

「未公開物件をご紹介します」という電話を切る判断力は、防御にはなっても、本当に良い物件を手に入れる力にはならない。優良な未公開物件がプロの投資家ネットワーク内でクローズドに動くなら、個人の買主がその流れに乗る方法は一つしかない—— 普段から信頼できる不動産業者と関係を築いておく ことだ。

不動産投資で資産を作りたい、あるいは本当に住みたい家を買いたい——そう思うなら、案件が発生してから業者を探しても遅い。担当者が「この物件はあの方に声をかけたい」と思い浮かべる範囲に入っておくこと。それが、情報の非対称性を越える唯一の道である。業者選びの判断軸は、取扱件数でも広告の派手さでもない。自社の利害構造を正直に開示してくれるか、合わない案件を「合わない」と言ってくれるか、数字の根拠を尋ねたときに筋の通った答えが返ってくるか——この3つを満たす相手に出会えれば、「未公開物件」という言葉に惑わされる局面は、そもそもほとんど発生しなくなる。

当メディアも、読者に電話営業を断るための知識を渡して終わりとは考えていない。業界の構造を知った上で、信頼できる相手を自分の目で選び取れるようになる——そこに記事を書く目的がある。


当メディアの記事は実務経験に基づく解説です。個別の投資助言を目的とするものではありません。

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