東京タワービューの物件、70億円では買えない理由
この記事でわかること
Q. 東京タワービューの物件は購入できますか?
Q. 東京タワービューの物件はすべて高額ですか?
Q. 予算70億円で港区の超高級物件は買えますか?
先日、ある投稿が目に留まりました。
港区の超高級レジデンス、東京タワーが見える部屋が欲しい。70億円まで出せる。
70億円。当社が扱う物件の中でも最上位クラスの予算です。正直なところ、手数料を想像して色めき立ちました。早速スタッフを集め、ミーティングを開始しました。
東京タワービューという魅力
東京タワーが見える住戸は、港区のタワーマンションに複数存在します。ただし、至近距離から見下ろすような眺望が得られる住戸は極めて限られます。ランドマーク眺望は再現不可能。新築で同等の眺望を得ることは事実上できません。
お客様が求めていたのは、単なる「東京タワーが見える部屋」ではありませんでした。港区に存在する、ある超高級ブランドレジデンス — ホテルブランドを冠した、住戸数が限られた超プレミアム物件の東京タワービュー住戸です。
70億円という予算を聞いたとき、私たちはこの案件を本気で動かせると思いました。
社内検討で見えた現実
ところが、スタッフとの検討は予想をはるかに超える内容でした。
まず前提として、港区のタワーマンションで30億円を超える取引自体がめったにありません。70億円は、一般的なタワマンであれば最上階の最も高額な住戸でも十分に手が届く予算です。
しかし、お客様が希望する超高級ブランドレジデンスは次元が違いました。このタイプの物件は一般のタワーマンションとはまったく異なるマーケットに位置しています(「超高級不動産とは?価格帯・定義・普通の不動産との違い」を参照)。
当該レジデンスの東京タワービュー住戸はほぼ流通しません。現在のオーナーが手放す理由がなく、仮に売りに出ても一般市場には載らない。売主が現れる可能性自体が限りなく低いという結論でした。
価格も桁が違いました。参考事例として、同レジデンス内で富士山ビューの住戸が約60億円で取引された実績があります。東京タワーの至近距離ビューはさらに希少性が高く、想定取引価格は 300億円レベル。70億円は超高級物件市場ではトップクラスの予算ですが、この特定の住戸には届きません。
さらに、仮に売主が現れたとしても壁は残ります。区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)第30条は、管理規約で区分所有者間の事項を定めることを認めており、超高級レジデンスではこの規定に基づき、譲渡時の理事会承認や買主の属性審査といった転売制限を設けていることがあります。加えて、超プレミアム物件特有の複雑な契約条件、物件評価に必要な情報の限定性など、通常の仲介スキームでは対応困難な条件が重なります。
売主が現れない、価格が届かない、仲介スキームが通らない — 三重の壁が見え、この案件はクローズとしました。「そんな面倒な物件を追いかけなくても」と仕入れ担当。当社にはオーナーと直接つながっている未公開の超高級物件が複数あります。手数料の皮算用は外れましたが、社内の知見は一つ増えました。
この案件から得られる判断軸
- 「買えない」も立派な判断 — 市場に出ない、予算が届かない、という事実を早期に見極めることが、次の案件に判断力を集中させる
- 超高級ブランドレジデンスと一般タワマンは別の市場 — 同じ「東京タワービュー」でも、物件のグレードによって価格帯はまったく異なる
- 流通しない物件を追うコストを見積もる — 「待つ」以外に手がない物件に仲介を依頼する時間・機会損失は冷静に評価すべき
- 管理規約の制約は初期段階で確認する — 区分所有法第30条に基づき、超高級レジデンスでは譲渡時の理事会承認や買主審査を管理規約で定めていることがある。転売制限の有無は、検討を深める前に押さえるべき項目だ
本記事は実話をもとに、個人・物件が特定されないよう加工しています。 当社は在庫を持たない仲介として、お客様と一緒に「あえて見送る」判断もお伝えしています。

